おしえて!たかみ~ん
園芸部技術アドバイザーの“たかみん”こと鷹見参事が
知られざる花回廊の植物について気ままに紹介します。
サクラの話
サクラほど日本人に愛されている花はないでしょう。春が近づくと、日本気象協会をはじめ、各民間気象情報会社がサクラの開花予測を始め、「桜前線」なるものが日本を北上していきます。サクラの開花を心待ちにするのは年間行事のひとコマになっているのではないでしょうか。
意外かもしれませんが、サクラは稲作と関係が深く、サクラの「さ」は稲作の神様のことだと言われています。稲作に関することは「さ」のつくものが多く、田植えをする旧暦の五月は「さつき」といい、植える苗は「さなえ」で、植える人は「さおとめ」と呼びます。田植えが終わった後は「さなぶり」(早苗饗)という神様を送る行事を行い、無事田植えが終わったお祝いをしました。一方で「くら」は依代( よりしろ) のことです。すなわち、サクラは「稲作の神様が降りてくる木」ということです。稲作が始まる頃になると神様が降りてきて、美しい花を咲かせると考えられていたのです。
日本に自生するサクラは10種が確認されています。これらの種とその変種、種間雑種をもとに育成された品種は800品種あるといわれています。最もよく知られている品種はソメイヨシノで、江戸時代中期の1750年頃、染井村(現在の巣鴨や駒込付近)で生まれたエドヒガンとオオシマザクラの雑種とされています。全国のソメイヨシノはこの木から接ぎ木で繁殖したクローンなのです。
昨年(令和7年)3月下旬、当園の敷地内でエドヒガンの大木を発見しました。中国山地を境に山陽側にはしばしば見られますが、山陰側では自生のものはほとんど見ることができません。なぜここにあるのか不思議でしたが、他にも2本発見し、この付近が自生地で間違いないだろうとの結論に達しました。
自生種のエドヒガンをはじめ、園内には40品種のサクラが植栽されており、3月下旬から順次開花します。この春、様々なサクラが鑑賞できるとっとり花回廊に、是非、お越しください。
早春の花・フクジュソウの生存戦略(11月6日更新)
短い秋が終わり冬になると、春が待ち遠しくなってきます。今回は早春に咲く代表的な植物、フクジュソウを取り上げます。
フクジュソウはキンポウゲ科の多年草で、北海道から九州の樹林下に自生し、4種の自生種が知られています。ただ、園芸店で「福寿草」として売られているものは、品種改良された園芸種がほとんどです。
フクジュソウは、季節的に光環境が大きく変化する落葉樹林下に適応した典型的なスプリング・エフェメラルで、林床の明るい雪解け直後から林冠が葉に閉ざされる初夏までの短期間に1年間の生活を終えます。開花期の早春は気温が低いため、訪花昆虫の活動は鈍く、昆虫を呼び寄せるのには不利な環境です。しかもフクジュソウは、訪花昆虫に対する報酬である蜜を持っていません。一体どのようにして昆虫を集めているのでしょうか?
フクジュソウは地上部全体が、ヒマワリのように太陽の動きに合わせて回転する性質(向日性)をもっています。花はパラボラアンテナのような形をしており、向きを変えて太陽光を真正面から浴び、効率的に熱を集めています。このことで花の内部の温度を外気温より6℃近くも高めることを可能にしています。花粉の運び屋である昆虫(ハエやアブなどの仲間)にとっては、フクジュソウの花は体温を高めたり交配相手を探したりする重要な生活の場となっているのです。蜜の代わりに熱を報酬として昆虫を集め、受粉を行っているのです。また、花の温度が高いことは、スムーズな受粉に有効で、結実率を高めることにもつながっています。早春の光を周到な戦略で利用することで生き残りを図っているのです。